研究課題/領域番号 |
14J12298
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
髙田 瑶子 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 強誘電体キャパシタ / 非貴金属酸化物電極 / 水素劣化 / 飛行時間型二次イオン質量分析法 |
研究実績の概要 |
強誘電体キャパシタ用電極材料の多くは、難加工性かつ高価な貴金属類であり、また、水素に対して触媒活性を示すため、半導体製造工程中での還元性雰囲気による強誘電性劣化 (水素劣化)の原因となる。本研究では、貴金属に代わる電極材料として、非貴金属酸化物導電体であるSnドープIn2O3(ITO)及びAlドープZnO(AZO)を上部電極に用いた強誘電体(Pb,La)(Zr,Ti)O3(PLZT)キャパシタ(ITO/PLZT/Pt及びAZO/PLZT/Pt)の水素劣化耐性を調査し、Pt上部電極(Pt/PLZT/Pt)に対する有効性を評価してきた。昨年度までは、水素雰囲気下での加熱による強制劣化を行い、水素劣化に伴う強誘電体キャパシタ中の水素分布を飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いて評価していた。今年度は、水素の定量性を改善するために、水素の代わりに重水素を用いて強制劣化(3%重水素雰囲気下、200℃、1 Torrで45分間加熱)を行った。 AZO/PLZT/Pt及びITO/PLZT/Ptキャパシタでは、残留分極値はわずかに減少したが、Pt/PLZT/Ptキャパシタでは残留分極値は著しく減少した。重水素の場合でも、ITO及びAZO上部電極の適用により、強誘電体キャパシタの水素劣化耐性が向上することが確認できた。 TOF-SIMSを用いて、水素劣化前及び水素劣化45分後における強誘電体キャパシタ中の深さ方向分析を行った。水素劣化前では、各上部電極を有する強誘電体キャパシタにおいて重水素イオンの存在は確認できなかったが、水素劣化45分後において、Pt/PLZT/Ptキャパシタでは重水素イオンが検出された。しかし、ITO/PLZT/Pt及びAZO/PLZT/Ptキャパシタでは、水素劣化45分後において、重水素イオンは検出されなかった。 本年度は、異なる上部電極を有する強誘電体キャパシタに対して水素劣化を行い、上部電極材料の違いによって、重水素の解離やイオンの拡散メカニズムに違いがあることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いて強誘電体キャパシタの各膜中の深さ方向の重水素分布を評価した。現在までに、Pt、ITO及びITO上部電極を有する強誘電体キャパシタにおいてTOF-SIMS測定を行い、上部電極材料の違いによって、重水素の解離やイオンの拡散メカニズムに違いがあることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、劣化時間を変化させることによる重水素分布の評価や、強誘電体キャパシタ中の重水素イオンの拡散メカニズムに関して詳細な検討を行うことで、より完全性の高いキャパシタ作成への指針を検討予定である。また、高配向性な導電性酸化物電極と強誘電体の作成に着手し、配向性、結晶子径の相違による水素の拡散挙動に関する知見を得る予定である。
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