研究課題
シグナル伝達は変動する分子の時間パターンに応じて異なる細胞応答を選択的に制御することが知られている。本研究ではNGFとPACAPによって、共通の経路を介しながらもPC12細胞がそれぞれで異なる神経分化をたどる動作原理に着目した。この動作原理は、対応関係を明らかにする分子生物学的手法からは解明されておらず、シグナル伝達の分野の課題の一つとされている。そこで、申請者は高精度で詳細な時系列データからデータドリブンモデルを構築する手法を用いることを考えた。この手法からは分子機構を仮定することなく制御機構を明らかにすることが可能である。上流のシグナル分子・IEGsから下流の遺伝子発現までの時系列データを計測し、データドリブンモデルを構築することで上述の動作原理を明らかにすることを目指した。H26年度はまず、本研究課題で計測対象とするNGF特異的、PACAP特異的に発現する遺伝子をマイクロアレイの結果から選定し、これらのmRNA量の詳細な時系列データを計測した。詳細な時系列データを計測するにあたって大量のサンプリングを高精度に行う必要があったが、これは自動分注ロボットによって実現した。自動分注ロボットを動作させるプログラミングやチューニングを当初の予定通り行うことができた。また、注目している遺伝子の上流にあたるシグナル分子とIEGs(Immediate Early Genes)に関しても自動分注ロボットを用いて詳細な時系列データを計測した。これまでに得られた成果は15th International Conference on Systems Biologyや国内学会でポスター発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
年次計画に記載した通りに時系列データの計測を行う環境を整えること、及び、詳細な時系列データを計測することができた。ただしデータドリブンモデル化を視野に入れた際に、当初の予定以上の量の時系列データが必要になる可能性が出てきた。必要に応じて適宜、時系列データの計測を引き続き行うことを考えている。
H26年度はデータドリブンモデルに必要な時系列データを計測した。今後はこれら時系列データから、上流のシグナル分子・IEGsから下流の遺伝子発現までのモデル化を行う。モデル化の枠組みの候補は既に実装可能段階にあり吟味中である。本研究で最適なモデルの枠組みを、時系列データの特徴に応じて試行錯誤しながら決定する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 学会発表 (6件) 備考 (1件)
http://www.kurodalab.org/member/tsuchiya/