研究課題
細胞増殖・分化等の生命現象を制御する因子として近年、細胞のエネルギー代謝状態が注目されている。哺乳類器官形成初期には劇的な細胞増殖・分化が生じるとともに、胚を囲む子宮内環境が胎盤接続に伴い変化する。この時期の胚は生育環境変化によるエネルギー代謝状態の撹乱に特に脆弱であり、またエネルギー代謝制御因子の変異体の多くは器官形成初期に致死となることから、エネルギー代謝状態の適切な制御がこの時期の胚発生に重要と考えられる。しかし、この時期に生じるエネルギー代謝状態変化の実体・意義の詳細は不明である。本研究では、哺乳類器官形成初期の胚において生育環境の撹乱が発生異常に結びつく機構として、生育環境変化に応じたミトコンドリアエネルギー代謝状態の変化が関わる可能性を見出した。また、哺乳類器官形成初期に生じる胚のエネルギー代謝状態変化に関して、近年急速に発達した質量分析技術を用いた解析を行なうことで次のモデルを提示した。器官形成初期には、TCA回路のみならず解糖系の活性亢進が生じるとともに、解糖系酵素PFK-1/Aldolaseの活性抑制により解糖系流路が再編成されペントースリン酸経路を迂回するようになる(論文投稿中)。本研究ではさらに、器官形成初期に生じるエネルギー代謝状態変化の制御因子としてヘテロクロニック遺伝子Lin28aに着目して解析を進めた。器官形成初期にLin28aの発現が胚全体のレベルで劇的に低下することを見出した。そこで、ドキシサイクリン依存的にLin28aを過剰発現させることの出来るtetO-Lin28aトランスジェニックマウスを用いて器官形成初期特異的にLin28aを過剰発現したところ、出生直後に致死となった。現在、時期特異的なLin28aの過剰発現が致死につながる原因として、エネルギー代謝状態変化への影響に着目して研究を進めている
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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