研究課題/領域番号 |
14J12376
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
小野 陽子 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | GPNMB / Na+, K+-ATPase / PI3K/Akt経路 / MEK/ERK経路 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、当研究室の過去の報告より、ALS病態に対する有用性の可能性が見出されたGlycoprotein non-metastatic melanoma protein B (GPNMB)について、GPNMB細胞外フラグメントの詳細な生理機能の解明を行った。Na+,K+-ATPase αサブユニットがGPNMB細胞外フラグメントの受容体候補として同定されたため、Na+,K+-ATPase α1siRNAを用いてGPNMB細胞外フラグメントがNa+,K+-ATPase αサブユニットを介して保護作用やPI3K/AktやMEK/ERK経路の活性化作用を示すか否かの検討を行った。Na+,K+-ATPase α1の発現抑制により、GPNMB細胞外フラグメントの保護作用やPI3K/AktやMEK/ERK経路の活性化作用が抑制されたことから、GPNMB細胞外フラグメントはNa+,K+-ATPase α1を介して細胞保護作用およびPI3K/AktやMEK/ERK経路の活性化作用を示すことが示唆された。以上のことから、Na+,K+-ATPase αサブユニットがGPNMB細胞外フラグメントの受容体のような働きをすることが示唆され、GPNMB細胞外フラグメントの受容体として働くタンパク質を同定できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GPNMB細胞外フラグメントの詳細な生理機能の解明に関して、GPNMB細胞外フラグメントがNa+, K+-ATPaseαサブユニットを介してPI3K/Akt経路およびMEK/ERK経路を活性化させることを見出すことができた。すなわち、GPNMB細胞外フラグメントの受容体のような働きを細胞膜上のタンパク質として、Na+, K+-ATPaseαサブユニットが同定された。これより、ALSや癌などGPNMB関連疾患の病態解明や有効な治療法の開発へとつながる重要な発見ができたことから、今後の治療法への貢献が期待されることから、着実に研究成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を発展させ、GPNMBとNa+,K+-ATPaseが関与する疾患に対し、これらの関与の検討を行う予定である。 脳腫瘍においてGPNMBのNa+,K+-ATPaseαサブユニット発現上昇が報告されている。脳腫瘍の第一選択治療法は手術による摘出であるが、複雑に浸潤するため完全な摘出が不可能であり、再発率が高い。さらに、抗がん剤や放射線療法に対する反応性が低いことから、有効な治療法が不十分であり、その開発が急務である。そこで、これまでの研究を発展させ、GPNMBがNa+,K+-ATPaseαサブユニットを介して脳腫瘍の病態進展に関与するか否かについて研究することにより、脳腫瘍の病態解明ならびに有効な治療法開発へと繋げる。今後行う検討項目を以下に示す。 (1)GPNMB過剰発現マウスを用い、マウスグリオーマ由来GL261細胞を脳実質に移植することで、脳腫瘍マウスモデルを作製する。(2)脳腫瘍モデルマウスにおいて、GPNMBがNa+,K+-ATPaseαサブユニットと相互作用を示すか否かの検討を行う。(3)脳腫瘍モデルマウスに対するNa+,K+-ATPaseα阻害剤の作用の検討を行う。(4)マウスグリオーマ由来GL261細胞を用いて腫瘍病態進展に関する詳細な検討を行う。 以上の検討を通して、GPNMBがNa+,K+-ATPaseαサブユニットを介して脳腫瘍の病態進展に関与するか否かを解明することにより、脳腫瘍の新たな有効な治療法開発へと繋げる。
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