研究課題/領域番号 |
14J12379
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
伊東 裕介 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 全固体電池 / 硫化物電解質薄膜 / コーティング / PLD法 / 電子顕微鏡観察 / 画像解析 / ラマンマッピング / 電極空隙率 |
研究実績の概要 |
全固体電池の特性を理解する上で、電極活物質-固体電解質間の界面構造の把握は重要であり、電極層に対するSEM観察は有効であろう。画像解析ソフトの利用により、電解質コーティングを施した電極内において、電極粒子・電解質コーティング層・空隙の存在量をそれぞれ数値化させることが可能となった。様々な条件で充放電を行った全固体セルに対する充放電前後の固体界面評価から、電池特性と界面状態の基礎的知見を見出した。電解質コーティング層のイオン伝導度が高く、電極内に存在する空隙の割合が少ない程、電池性能の改善が確認された。電池の高性能化を図るためには、電極中の電池反応の分布を調べることも重要である。反応分布の解析手法例として、ラマン分光分析では充放電に伴う電極粒子の構造変化をスペクトルの変化として捉えることができる。そこで、電極複合体を構成する成分に対して、ピーク位置に応じた色分けを行えば、電極粒子の充放電状態分布の評価が可能となるのではないかと考えた。電解質コーティングを施した電極粒子を用いた電極複合体に対してマッピング測定を行った所、電解質層のイオン伝導度が高く、電極内の空隙割合が少ない場合において、反応分布の存在は確認されず、電池反応は均一に進行するということを、全固体系の電池評価法としては初めて明らかにすることに成功した。電極内の充填密度を増大させる1つのアプローチとして、2種のサイズの異なる電極粒子上への電解質コーティングを施した電極複合体の構築に着目した。異なるサイズを有する電極粒子を混合することにより、サイズの大きい粒子の間を、SE層やサイズの小さい粒子が埋めることで、電極層の空隙率は2 %程度まで減少した。大小異なるサイズの粒子配合により電極-電解質間の界面抵抗は低減され、ハイレート作動時における放電容量の増大が確認された。さらに、サイクル性の向上にも効果的であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子顕微鏡や画像解析ソフトを使用することにより、電解質コーティングを施した電極粒子を用いた電極複合体の微細構造を観察した。電極微細構造と電池性能との関係性を見出した結果、電極内に存在する空隙の割合が電池の充放電容量やレート特性、サイクル性に影響を及ぼすことを見出した。また、大小異なるサイズを有する電極活物質を配合させることで、電解質コーティングを施した電極複合体中の充填密度は、ほぼ100%まで増大した。電極内の電池反応の分布を測定できる解析技術として開発したラマンマッピング測定は、全固体系の電池においては初めての報告例である。電解質コーティングを施した電極粒子を用いた電池において、反応が分布なく均一に進行することを明らかにすることが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
PLD法を用いて電解質コーティングを施した際に、電極内の電解質量の規定はまだ行えていない。現状は、粒子状への電解質薄膜の厚みからコーティング量を見積っているが、電極構造の電子観察画像結果に対して画像解析を行い新たなコーティング量の規定手法の開発が必要であると考えている。上記のように、電極構造が電池性能に影響を及ぼすことは実験結果を通して明らかにするができた。しかし、実験から得られた電池性能に影響を及ぼす種々の構造因子の妥当性に関しては、今後シミュレーション測定などにより、議論する必要性があると考えている。さらに、ラマンマッピング測定結果に関しても、更なる解析の必要性がある。集電側からセパレータ側にかけて、充放電に伴うラマンスペクトルの変化を調べ、電極内で反応分布がどのように形成されていくのか、その描像を確認したいと考えている。
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