研究実績の概要 |
逆行性輸送経路はタンパク質や脂質が細胞膜からゴルジ体へと輸送される経路であり、個体の発生、細胞の増殖及び正常な機能維持のために必須であることが報告されている。近年、逆行性輸送によって運ばれる分子がゴルジ体へと到達する過程で、エンドソームの一つであるリサイクリングエンドソーム(RE)を経由することが明らかになってきた。当研究室では、REを介する逆行性輸送の制御分子としてevectin-2、SMAP2、AP-1/クラスリンという分子を同定し、その機能について報告してきた(Uchida et al. PNAS (2011), Matsudaira et al. PLoS One (2013))。今年度、さらにAP-1/クラスリンという分子がSMAP2と協調してREからの逆行性輸送を制御することを報告した(Matsudaira et al. J Cell Sci. (2015))。現在、REの新規機能の同定のため、REにPhospatidylserine(PS)が多いという性質を利用し、evectin-2のPH domain由来のPSプローブ(Uchida,et al. PNAS (2011), Lee et al. EMBO J (2015))と、周辺ビオチン化タンパク質BirA*をつなげたコンストラクトを作製し、その安定発現細胞株を樹立、ビオチン添加によりPS近傍のタンパク質をビオチン化させたのち、質量分析によってPS近傍タンパク質を網羅的に同定した。その中に、PSが豊富に存在するオルガネラであるREでの局在が報告されている分子や、PSに結合することが示されている分子が少なからず同定されており、この系の妥当性が認められた。解析の結果、予想外にも組織の大きさを制御するHippo pathwayに関与する分子の同定が確認され、実際にいくつかの分子がREで制御されることを見出した。
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