研究課題/領域番号 |
14J12491
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
黒嶋 智美 千葉大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 会話分析 / 外科手術 / シミュレーション / 3D画像 / エスノメソドロジー / 実践的推論 / 定式化 / ワーク |
研究実績の概要 |
27年度は,研究協力先機関の協力を得て,合計7件(13.5時間分)の消化器外科手術場面の撮影を行った.研究手法は前年度と同じく,会話分析によって,会話データを詳細に文字起こしし,分析を行った.昨年度よりも分析において,血管や臓器の同定という専門的なワークにおけるそのやり方を,人間の知覚や認識といった個人の内面に帰属されがちな概念が,どのようにじっさいのやり取りの中で参与者に取り扱われ,相互行為の中で立ち現れてくるのかという分析的焦点から議論を進めている.具体的に最も新しく行った分析では,1人の外科医が提示した血管の生え方にかんする所見,観察が,「不確か」であるが,話し手自身の知識に基く実践的推論として提示され,当面の手術を進めていくのに十分な知識として扱われていることが明らかになった. また,副鼻腔モデルを利用した内視鏡下副鼻腔手術訓練データについては,昨年度,研究協力先機関から5件(5時間)の録画データを取得したものの分析を鋭意進めている.8月の国際EMCA学会(デンマーク)での口頭発表では,1)シミュレーション用モデルの構造という側面が,手技を行う上での確認対象となり,常に志向される対象(つまり,人間の副鼻腔とは異なる構造を持つものとして)として,「モデル」が取り扱われている,2)シミュレーション用モデルが,手技を遂行する上で研修医が直面する様々なトラブルに対処する際,そのトラブルによって手技が行えないことを,モデルの持つ,「モノ性」に言及し,それを引き出すことで正当化しようとしていること,3)シミュレーション用モデルに手技を行なう行為は,言語的に,簡単で,それほど重要性を持つものとして定式化されていないことから,シミュレーション場面であるゆえに,そのような定式化が可能になっていることを分析によって示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
消化器外科手術の会話分析研究は,研究協力先機関の協力を得て,合計7件(13.5時間分)の消化器外科手術場面の撮影を行った.分析の知見は,日本肝胆膵外科学会,消化器関連学会でそれぞれ報告した.また,副鼻腔モデルを利用した内視鏡下副鼻腔手術訓練データについては,昨年度,研究協力先機関から5件(5時間)の録画データを取得したものの分析を鋭意進めている.こちらは国際エスノメソドロジー・会話分析学会にて知見を報告している.データの蓄積は着実に出来ており,分析も概ね進められている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,データ収集は大体終えることにし,事例数を増やし,分析の記述を厚くしていくことを目標とする.また,学会発表も随時行い,その内容を論文にまとめ,年度末までの投稿を目指す.今後も,研究協力者との連携,研究交流は欠かさないように行っていく.
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