不登校の成因には慢性的な睡眠障害を基盤とした中枢性/精神性疲労が関与している。これまで申請者は、中枢性疲労の誘発機構には血中トリプトファンとキヌレニンの脳内相乗取り込みが起源となり、視床下部と海馬組織のグリア―ニューロン回路間でトリプトファン―キヌレニン経路の代謝亢進が生じた結果、認知機能を抑制することを明らかにしてきた。今回、中枢性疲労の誘発機構について、組織化学的手法による解析を試みた。 (1)中枢性疲労時の血液脳関門の透過性に関する検討 末梢で増加したトリプトファンやキヌレニンは、血液脳関門上の中性アミノ酸トランスポーターを介し、脳内へ移行・制御されている。Esposito et al.(2001)は精神性ストレスにより、血液脳関門の透過性が上昇することを報告している。即ち、中枢性疲労時、末梢で増加したトリプトファンやキヌレニンは透過性を増した血液脳関門を直接、通過するかもしれない。そこで、申請者が開発した睡眠障害型中枢性疲労(CFSD)モデルラットを用い、血液脳関門の透過性を解析した。その結果、CFSDモデルラットの脳にエバンズブルー投与の青染色が認められた。即ち、中枢性疲労状態では血液脳関門の透過性が上昇している。 (2)中枢性疲労時のニューロンの可塑性に関する検討 Guzman-Marin et al.(2003)はトレッドミル走行を96時間課した断眠ラットを用い、断眠が背側海馬歯状回のニューロン増殖を抑制することを報告している。即ち、不登校児童の睡眠障害を基盤とした中枢性疲労状態ではニューロン新生・維持の崩壊に繋がる可能性がある。現在、University of Leicester(UK)との国際共同研究により、免疫組織化学法によるニューロンの可塑性を検討している。
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