植物細胞壁からセルロースナノファイバーを製造するには、機械的なせん断力だけでなく、細胞壁中のリグニン等のマトリクス成分の効果的な除去技術が重要であることが明らかにされている。 脱リグニン処理に過酷な漂白処理を行う必要がある木材に比べて、竹を含むイネ科植物は比較的マイルドな処理で完了することを示しており、化学処理によるセルロースナノファイバーのダメージを軽減させることができる可能性がある。そこで本研究では、3年以上の成竹を用いて、アルカリ処理のみを行い解繊処理を経て作製したセルロースナノファイバーと、従来法である亜塩素酸ナトリウムによる脱リグニン処理、およびアルカリ処理を行い、解繊処理を経て作製したセルロースナノファイバーとの比較を行った。 原料である成竹からアルカリ処理のみを行ったパルプおよび従来法で作製したパルプにおいてヘミセルロースおよびFerulic acid やp-Coumaric acidのようなリグニンの分岐構造に由来するピークの消滅が確認された。一方、リグニン由来のピークはアルカリ処理のみパルプにおいては消滅しておらず、溶脱されなかったリグニンの存在も確認できた。またこれらのパルプを用いて熱分解挙動の解析を行った。アルカリ処理のみパルプは低温側での重量減少が大きく、熱分解温度も低かったものの、原料である竹粉および脱脂処理のみを行った紛体に対して熱分解温度の上昇が確認された。次に、精製したパルプをグラインダー処理により解繊しシート化したものの形態観察を行ったところ、従来法、アルカリ処理のみCNFともにナノファイバー化に成功していた。 また、新規化学処理手法の検討として草本植物を用いてブタノール/硫酸法によりリグニンが低・中・高含有量のリグノセルロースを製造し、それらをグラインダー処理することでナノファイバー化に成功した。
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