研究課題
Ezh2コンディショナル欠損マウス骨髄細胞をレシピエントマウスに移植後、Ezh2を欠損させることにより、造血特異的Ezh2欠損マウスを作成し、その造血の長期観察を行った。その結果、Ezh2欠損後10カ月前後でマウスは造血器腫瘍を発症した。一部T-ALLも発症したが、骨髄球系腫瘍が主であり、CMMLを含むMDS/MPN様病態が多く、次いでMDSが認められた。この結果は、患者検体でのEZH2変異の頻度と合致するものであった。また、Ezh2欠損マウスはコントロールに比較して血小板数が増加する傾向を示したが、長期観察後にさらに増加する個体が20-30%で認められた。Ezh2の機能欠損による造血疾患形成のメカニズムを理解するため、Ezh2欠損MDSマウスのLSK細胞を用いて網羅的遺伝子発現解析を行ったところ、Ezh2欠損に伴うH3K27me3の減少によって多くの遺伝子発現の脱抑制が認められたが、造血幹細胞においてプロモーターが相反するヒストン修飾(H3K27me3とH3K4me3)でマークされるいわゆるbivalent遺伝子群は、その抑制状態が維持されていることが認められた。Bivalent関連遺伝子は分化制御遺伝子を多く含むこと、またEzh1を含むPRC2複合体(Ezh1-PRC2)が修飾に寄与していることがES細胞の解析から示されていることから、Ezh2欠損を部分的にEzh1が代償しているものと予測し、クロマチン免疫沈降シークエンス(ChIP-Sequence)を行ったところ、Ezh2欠損により一度減少したH3K27me3修飾が多くの遺伝子プロモーターで部分的あるいは完全に回復することが確認された。さらにEzh1/Ezh2ダブルノックアウトマウスを作成して骨髄移植を行うとEed欠損マウスと同様に骨髄長期再構築は完全に失われた。したがって、Ezh2の機能欠損による造血器腫瘍の形成にはEzh1の発現が必須であることが示唆された。これらの結果を論文にまとめ、本年度Blood誌に掲載した。
2: おおむね順調に進展している
研究結果を論文にまとめ、掲載した。
更なる造血器腫瘍の形成メカニズムに迫るべく、確立した系を利用して研究を進めてゆく。また、新たに他のヒストン修飾分子のノックアウトマウスを利用して造血器腫瘍での機能解析を始める。
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