本研究の目的は『膵α-アミラーゼの糖鎖認識が、1.糖質消化、2.糖吸収、3.インスリン分泌の各機能に与える影響を明らかにし、各機能を選択的に制御する特異糖鎖を創出すること』である。 昨年度に引き続き、特異糖候補として、多糖ならびに各糖に対する特異的レクチン(マンノース、シアル酸、フコース、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース特異的レクチン等)を対象として各活性への影響を調べた。その結果、「糖質消化」においては、膵α‐アミラーゼによるデンプン分解活性、SIによるスクロースおよびマルトース分解活性に対して、各々阻害を示す物質を選出した。「糖吸収」においては、SGLT1活性に影響を与える多糖およびレクチンを選出することができなかった。原因として多糖とレクチンの濃度が低かったことが考えられるため、活性測定条件等のさらなる検討が必要である。「インスリン分泌」においては、特定のレクチンにDPP-4活性への阻害傾向が観察され、インスリン分泌を促進する働きをもつことが示唆された。これら結果から、糖質消化促進、糖質消化抑制、インスリン分泌促進のそれぞれにおいて、有効な物質が選出できた。 次に、特異糖鎖による作用機序解明を明らかにするために、膵α-アミラーゼの腸内挙動への影響を調べた。その結果、特異糖鎖非存在下では、膵α-アミラーゼがブタ小腸粘膜および単層培養Caco-2細胞表面に結合するのに対し、特異糖鎖存在下では、その結合が阻害された。 以上より、本研究によって特異糖鎖およびその作用機序の一部を明らかにすることができた。
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