研究課題/領域番号 |
14J40074
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
宋 恵媛 早稲田大学, 国際学術院, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | コリアン・アメリカン / 在日朝鮮人 / アメリカ / 比較文学 / ディアスポラ / 植民地 / 朝鮮戦争 / 移民 |
研究実績の概要 |
本研究は、コリアン・アメリカン文学と在日朝鮮人文学という、三地域にまたがるコリアン・ディアスポラの比較研究を通して、一九四五年八月以後の朝鮮文学の歴史理解にあらたな光を当て、近現代朝鮮における日本および米国の影響を解明するものである。二〇一五年度は①資料調査の継続と整理②学会報告③論文執筆と翻訳作業という三つの大きな柱に沿って研究を進めた。 ①に関しては、三つの作業を並行して実施した。一つ目は在日朝鮮人文学目録作成のための資料収集および入力作業である。今年は新聞に関する作業を重点的に行い、完成のめどを立てた。二つ目は在日朝鮮人文学資料収集刊行の準備である。本年度に資料収集と取捨選択を終え、現在は刊行に向けて解説の執筆を行っている。三つ目はコリアン・アメリカン関連資料の現地調査である。ロサンゼルスのUCLA図書館で資料渉猟を行い、初期移民に関する書簡やコミュニティ新聞など、貴重な資料に触れた。同時に、同大学のアジアン・アメリカン研究センターに通い、コリアン・アメリカン文学の研究動向を知る機会を得た。また、朝鮮戦争期に米軍通訳に従事した方へのインタビューも実施した。 ②については、韓国・ソウル大学での国際シンポジウムで報告をした。ここでは在日朝鮮人文学における言語問題について、「日本語で脱植民地化は可能か―解放直後の在日朝鮮人作家たちの葛藤」という題目で発表をし、ロシア、中国といった他地域のコリアンダイアスポラ研究者と討論を行った。 ③に関しては三つの作業を行った。まず、コリアンアメリカン作家の嚆矢であるヨンヒル・カンについての英語論文の翻訳を学会誌に掲載した。また、1945年以降の在日朝鮮一世女性の歴史を論じた依頼論文を執筆した。さらに、②のシンポジウムでの発表文をもとにした英文論文の執筆を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、昨年度の日本国内および米国ハワイ、ワシントンでの調査経験を活かし、限られた滞在期間のなかではあったが、資料調査やインタビュー調査などを効率よく進め、多くの貴重な資料を入手することができた。資料集、目録の完成、本格的な論文執筆作業に向けての基盤がほぼ整いつつある。
一方、収集資料の整理作業(記事のピックアップ作業と文字入力依頼等)も今年は順調に進んだ。翻訳論文の発表や学会報告、論文執筆などのアウトプットを行うことができたことも大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も引き続き日本と米国で資料調査を進めつつ、前年までに収集した資料の整理を行いながら、発表や刊行に注力する。論文発表、学会発表のほか、在日朝鮮人文学作品資料集の刊行準備のための解説執筆、在日朝鮮人文学関連目録(1.新聞記事目録 2.雑誌・単行本目録)の刊行を目指す。 今後の研究推進にあたり現時点で確定しているのは、四月の国内学会発表、五月の国内資料調査、および在日文学関連英文論文提出、六月の在日女性に関する論文刊行、八月末の韓国での在日作家についての学会発表、九月の米国での資料調査、一二月の在日文学関連資料集刊行である。上記以外にも、目録の刊行準備とコリアン・アメリカンに関わる論文執筆を進めていく予定である。
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