研究課題/領域番号 |
14J40075
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
片山 裕美子 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2018-03-31
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キーワード | 残光 / 蛍光体 / 遷移金属 / 希土類 / 電子構造 / エンスタタイト / ペロブスカイト |
研究実績の概要 |
生体イメージングを指向した赤-近赤外長残光蛍光体の創製と特性発現メカニズムの解明を目的とし、Mn2+およびCr3+を発光中心とする金属酸化物蛍光体の残光特性を評価した。赤-近赤外長残光蛍光体は、生体透過率の高い領域(650-1300nm)に残光を示すため、信号-雑音比の高い生体イメージングを可能にする材料である。 希土類を共添加物としたMgGeO3:Mn2+-Ln3+(Ln=Eu, Yb)エンスタタイト赤色残光蛍光体の蓄光特性を含む光学特性を評価し電子エネルギー準位を構築した。Dorenbos modelに基づいて見積もられた希土類2価エネルギー準位と伝導帯下端とのエネルギー差は、熱ルミネッセンス測定により得られた希土類添加により形成されるトラップの深さと概ね一致した。このことから、共添加希土類が電子トラップとして機能するメカニズムが強く示唆された。 さらに、MgGeO3:Mn2+-Ln3+赤色残光蛍光体のZn置換による残光特性変化について調査した。Zn置換量の増大に伴い伝導帯の下端が低下し、ランタニド添加により形成される電子トラップのトラップ深さが浅くなることが明らかとなった。Zn置換によるホストバンド制御により作製されたEuを電子トラップとした新たな赤色残光蛍光体(Mg,Zn)GeO3:Mn2+-Eu3+はMgGeO3:Mn2+-Yb3+よりも強い残光輝度を示した。 また、新たにLaAlO3:Cr3+ペロブスカイト蛍光体が734nmという深赤色に、高効率発光を示すことが知られるR線による残光を示すことを発見した。希土類2価の4f電子結合エネルギーを考慮し、適切な深さの残光トラップを形成する共添加物としてSmを導入し、その残光輝度を35倍まで高めることに成功した。本材料は、既報材料ZnGa2O4:Cr3+と比較し40 nm長波長で残光し、同等以上の残光輝度を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究遂行期間は6カ月であったが、大きな成果を得ることができた。新たにLaAlO3:Cr3+ペロブスカイト蛍光体が深赤色残光を示すことを発見した。この内容は、速報性が認められ、Applied Physics Express誌に出版された。残光機構解明のための実験を進めており、来年度の研究進展も大いに期待される。その他、共著論文1報、国内学会における口頭発表4件(本人発表2件、共著2件)と勢力的に対外発表を行うなど、6カ月間という短い期間に研究を進展させた。
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今後の研究の推進方策 |
1) 新たに発見したCr3+添加ペロブスカイト残光蛍光体について、光照射ESRや光電流測定による詳細な残光機構の調査を行い、組成、共添加物を検討することで長寿命化を図る。 2) 組成選定を行い、生体イメージング応用を目指したボトムアップ法によるナノ粒子作製に取り組む。
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