生体イメージングを指向した赤-近赤外長残光蛍光体の創生と特性発現メカニズムの解明を目的とし、H27年度はCr3+を発光中心とする金属酸化物蛍光体を評価した。これら蛍光体は、生体透過性の高い波長領域(650-1300nm)に残光を示すため、信号-雑音比の高い生体イメージングを可能にする材料である。 昨年度、我々はLaAlO3:Cr3+ペロブスカイトが残光を示すということを発見し、その残光輝度を希土類イオンのSm3+を共添加することによって35倍まで高められることを報告した。当該年度は、さらに希土類イオン共添加物依存性、熱ルミネッセンスグロー曲線の励起波長依存性、残光減衰曲線の温度依存性などを調査し、本試料の残光過程が、電子トラップモデルによる物であることを示した。 また、Y3Al2Ga3O12:Cr3+ガーネット深赤色残光蛍光体が残光に寄与する浅いトラップと、残光には寄与せずに保持される深いトラップを持つという特徴に着目した。我々は、この特徴が繰り返し可能な生体イメージングに応用できると考え、光刺激誘起残光の観測を試みた。そして、625nmの赤色の光刺激によって光刺激誘起残光が効率的に起こることが、熱ルミネッセンス測定および残光、赤色光刺激誘起残光減衰曲線測定によって示された。
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