研究実績の概要 |
交感神経系刺激による活動電位調節に重要な心室筋イオンチャネル(IKsチャネルおよびICa,Lチャネル)のチャネル機能の発達変化と性差に着目し、交感神経系刺激応答の新規関連因子・分子機構を同定するという本研究の目的のために行った、ヒトIKsチャネルを心臓特異的に発現するトランスジェニックマウスを用いた実験において見出したIKsチャネルと心筋の興奮収縮連関に関わる因子(Calcium transporting protein X: CPTX)との相互作用が、心筋興奮終焉期における活動電位と筋弛緩との共役を説明する新規の機構かもしれないという点で、性差よりさらに普遍的な概念になりうることから、優先的にこの事象を研究することにした。 これまでに野生型モルモット、イヌの生理条件下においても相互作用を確認したことから、今年度は、イヌ心室の細胞抽出液を用いて、GST融合タンパク質によるプルダウンアッセイを行い、分子複合体の形成に必要なIKsチャネル上の領域を特定することを目指した。IKsチャネルのアルファサブユニットであるKCNQ1は細胞内領域が長く、この部分が様々な分子と相互作用することによって、チャネルの機能が調節されることから、KCNQ1のN末およびC末の細胞内領域に焦点を絞って、分子複合体の形成に必要な領域を探索した。その結果、N末では近位部が、C末ではN末側からA, B, C, Dと4つあるヘリックス構造の内、ヘリックスBが分子間相互作用に関与することを明らかにした。 また、IKsチャネル上の相互作用領域が細胞内領域に見つかったことから、CPTXについても、その細胞内領域とMBP融合タンパク質を精製し、先述のKCNQ1の相互作用領域のGST融合タンパク質とGSTプルダウンアッセイを行ったところ、CPTXについても相互作用領域が細胞内領域に存在することが示唆された。
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