研究実績の概要 |
本研究では,異方性の時空間変化の観測に基づいた地球内部の状態変化についての検討を課題としており,以下を計画している;(A)地震活動が変化した地域における異方性の時間変化と地殻応力の時間的推移の関係についての検討(B)プレート境界における異方性の時間的推移と静的および動的な諸変化についての考察(C)広域の異方性変化の時間的変化についての検討. 今年度は,1.P波方位異方性のトモグラフィー解析によって背景領域の異方性構造の把握に努めて,2.1に関する論文投稿準備を進めるとともに,3.プレート境界域の低周波地震を用いた異方性測定を実施した. 1.Ishise & Oda (2005, 2008) 及び(石瀬・川勝,2012)の手法をHi-netのP波よみ取り値に適用し,東日本の地殻・最上部マントルの3次元P波方位異方性および鉛直異方性速度構造を明らかにした(石瀬・他,2014;Ishise et al., 2014).当該領域は,東北地方太平洋沖地震前後で地震活動が大きく変化した地域を多数含むと同時に,現在進行形で火山活動の変化が観測されている地域でもある.ここで得られた異方性は,今後の地域的な異方性の時間変化の検討の際の基準としての役割をもつ. 2.関東・東海地方のP波方位異方性トモグラフィー解析に関する成果が出版された(Ishise et al., 2015, PEPI).また,(1)で得た異方性を基に沈み込み帯のダイナミクスを検討し,その論文化を進めた. 3.「低周波地震(気象庁)」に注目し,S波の波形解析による異方性測定を実施した.今年度は,四国東部の低周波地震を解析し,低周波地震が異方性解析の対象になり得ることを確認した.当初計画では予定していなかったが,低周波地震の特性を考慮すると,地球内部の変化の検出に最も都合が良い対象であろうと考え,実施に至った次第である.
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