研究実績の概要 |
本年度は,本研究で開発を進めている地震波異方性の連続測定方法が,海底地震観測記録にも適用可能かどうかの吟味を行った.解析には,2016年4月1日に発生した三重県南東沖地震(M6.1)を含む,約1か月分のDONET1による海底地震記録を使用した.その結果,観測点周辺の環境にもよるが,地震波異方性の測定は可能であることが確認できた.例えば今回の解析では,三重県南東沖地震の震源近傍の観測点において,当該地震の強震動の影響による構造の変化と考えられる地震波異方性の急変が観測された.ただし,地震波異方性と同時に測定している入射波の到来方向や入射角については,海底面に存在する地震波速度の低速度層の影響により,これらの決定が困難であることが明らかになった. また,本年度は,当該手法が微動検出方法としても活用できる可能性があることを明らかにした.今後,地震波異方性と微動活動を同時にモニタリングできるよう手法を改良できれば,プレート境界地域や火山地域など,微動活動を特徴とする地域における地球内部状態変化についての理解が格段に深まると期待できる. 以上の結果を受け,本年度は,地震波異方性の連続測定(モニタリング)の多点展開を目指した取り組みを行った.具体的には,計算時間の短縮化を図った.これまでの測定では計算時間がかかりすぎていたため,連続測定の期間を長くしたり観測点数を増やしたりすることはできなかった.そこで,申請者が所属する所属機関の研究補助を受けてGPU(Graphics Proccesing Unit)サーバーを導入し,計算速度の向上を図った.この成果は2018年5月に開催される地球惑星連合大会で発表する [Ishise, Nishida, and Mochizuki, 2018 JpGU].
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