研究実績の概要 |
本年度は,地震波異方性の計算を効率的に行う目的で2017年度に導入したGPU(Graphics Processing Unit)サーバーを本格稼働させることができた.これにより,本研究で開発を進めてきた地震波異方性(S波スプリッティングパラメータ)の連続測定(地震波異方性モニタリング)の計算時間の大幅な短縮化に成功し,地震波異方性のモニタリングを多点展開することが可能となった.そこで,この計算システムを用いて四国地方の約40点のHi-net観測点において約7か月間の地震波異方性モニタリングを実施し,地震波異方性の時間変化とスロー地震活動(深部低周波微動活動,スロースリップイベント)の推移の関係について調査・検討した.その結果を,2018年5月に開催された地球惑星連合大会(幕張メッセ)で発表した [Ishise, Nishida, and Mochizuki, 2018 JpGU]. 申請者が過去に開発したP波方位異方性トモグラフィ法(Ishise and Oda,2005; 2008),およびP波鉛直異方性トモグラフィー法(石瀬・川勝,2010;Ishise et al., 2018)を用いて,東北地方下の地殻および最上部マントル領域のP波方位異方性速度とP波鉛直異方性速度の3次元分布を明らかにした.そして,太平洋スラブとマントルウェッジの地震波異方性の特徴を明らかにした.また,地震波異方性の対称軸の傾斜角を考慮することで評価できる「見かけの異方性」という考え方を新たに導入し,当該地域における太平洋スラブとマントルウェッジの地震波異方性構造に新たな解釈を与えた.この内容をIshise et al. (2018)で発表した.
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