研究課題/領域番号 |
14J40107
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研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
村田 里美 独立行政法人農業環境技術研究所, 有機化学物質研究領域, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | ポリ塩化ビフェニル (PCB) / 水酸化ポリ塩化ビフェニル (OH-PCB) / PCB分解菌 / OH-PCB分解菌 |
研究実績の概要 |
ポリ塩化ビフェニル(PCBs)は難分解性物質としてその毒性が懸念されているが、 PCBsは紫外線などの物理・化学反応、植物や動物の代謝反応によって、より毒性の高い水酸化PCBs (OH-PCBs)に変換されることが報告されている。一方これまで分離報告のあるPCBs分解菌は代謝産物としてOH-PCBsを生成することが報告されており、環境中のPCBsのバイオレメディエーションを研究する上で、PCBsとOH-PCBsの両面を検討する必要があると考えられる。そこで本研究ではPCBsとOH-PCBsの両方を分解する微生物を単離し、その菌学的特徴を明らかにすることを試みた。 OH-PCBs 分解菌N-9株は4-Hydroxy-3chlorobiphenyl (4OH-3CB)を加えた無機塩培地を用いて茨城県の腐葉土から分離された。N-9株は Sphingomonas属に属する菌種であり、4OH-3CB (10ppm)を1日で分解し、それにより細胞の増殖と代謝物の生成が確認された。4OH-3CB分解で生成された代謝物をUPLC-ESI-MSを用いて同定した結果、m/z =172.6に塩素ピークが確認され、3クロロ4ヒドロキシ安息香酸であることを明らかにした。N-9株による他のOH-PCBの分解能を検討した結果、N-9株は1~4塩素のOH-PCB分解を得意とし、分解能は塩素数に反比例すること、また水酸基の位置に依存することを明らかにした。一方N-9株は1~4塩素のPCBsを分解し、その代謝物としてクロロ安息香酸を生成することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分離されたSphingomonas sp. N-9株は水酸化PCBのみならず、親物質としてのPCBも分解できたことから、今後バイオレメディエーションの実用化に向けて有望な菌株であると考えられる。またPCBs分解菌の分離は多数報告されているが、OH-PCBs分解菌の報告はほとんどなく、OH-PCBs分解菌の特徴はほとんど明らかにされていない。これらの成果は2015年度の農芸化学会で発表し、現在論文にまとめていることから、本年度の研究は遂行されたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
実際にPCBsやOH-PCBsのバイオレメディエーションを行う上で、微生物により代謝され生成された物質が親物質より安全かどうか評価する必要があると考えている。そこで本年度はラットの副腎髄質由来の褐色細胞腫神経細胞分化のモデルであるPC12細胞を用いて、 ①マイクロアレイとIN Cell Analyzerを用いたOH-PCBの毒性影響評価 ②分離されたSphingomonas sp. N-9株が生成するPCBsとOH-PCBsの分解代謝産物(3クロロ4ヒドロキシ安息香や酸クロロ安息香酸など)の毒性影響評価 を行う予定である。得られた研究成果は、学会で報告するとともに、英文雑誌への投稿を行うことを考えている。
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