平成28年度は、来日したタタール人研究者たちの協力を得て、私の研究が大きく進展した年となった。まず、平成28年4月より3か月間、日本学術振興会の外国人招へい研究者として東洋文庫に滞在した、ロシア連邦カザン連邦大学のディリャーラ・ウスマーノヴァ教授とともに、東京の代々木上原に住む在日タタール人、アパナイ家を訪ねる機会を得、19世紀にカザンの大商人だったアパナイ(アパナエフ)家と日本とのつながりを確認できた。 8月には、中国新疆のイリにおいて、19世紀末にロシアからイリに移住したタタール商人の子孫と面会し、タタール人学校やタタール人墓地を訪ねて、イリのタタ―ル商人コミュニティの歴史を現地で調査した。 10月には、東北大学で行われたロシア史研究会大会の共通論題「ロシア史における宗教間関係」において、「19世紀ロシアにおける正教宣教・イスラーム復興・タタール商人」という題で報告を行った。 2月に2週間、ロシアのサンクト・ペテルブルクに資料調査に出かけ、ロシア歴史文書館とロシア国民図書館で様々な資料を調査した。 3月はじめには、東洋文庫で招へいしたタタール国立文書館の館員イリヤース・ムスタキモフ氏とともに、東京ジャーミーを訪れ、戦前に東京ジャーミーに併設されていたタタール人学校の教科書などの貴重な資料を閲覧する機会を得た。3月末には、受け入れ機関である東洋文庫の研究発表会にて、「ロシア・中央アジア・新疆間におけるタタール商人の活動」という題で研究発表を行い、この3年間のタタール商人研究の成果をまとめた。
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