研究課題
イネ葉組織内から単離された細菌Azospirillum sp. B510は、イネに感染・定着することでイネの生長促進および病害抵抗性増強効果を付与することが明らかにされており、本菌の利用は環境低負荷型の農業に非常に有益であることが期待されている。しかしながら、現在までに、本菌がどのようにイネに感染・定着するのかは明らかにされていなかった。そこで、本研究では、分子生物学的な手法を用いて、Azospirillum sp. B510の感染・定着に関わる遺伝子を同定し、そのメカニズムを明らかにする。本年度は、Azospirillum sp. B510-DsRED蛍光標識株を作成し、蛍光顕微鏡を用いて経時的な感染過程の観察を行い、本菌がイネの根の側根基部の組織の裂け目から植物組織内に侵入することを明らかにした。また、植物組織内での定着が顕著に減少した変異株を見出した。候補となる遺伝子の欠損株を作出し、植物組織への定着を確認した結果、候補遺伝子欠損株で植物組織内への定着の顕著な減少が認められたことから、本候補遺伝子が植物共生細菌の植物内共生に関わる遺伝子であることが示唆された。植物の定着に関わるエキソポリサッカライドやバイオフィルムの生成量を野生株と候補遺伝子の欠損株とで比較したが、これらの生産量に違いは認められなかった。また、本菌は鞭毛による運動能力を有しているが、これに関しても違いが認められなかった。今後、この欠損株の表現系の違いや植物組織内での挙動を詳細に解析することで、本候補遺伝子の植物ー微生物共生に果たす役割を明らかにしていく。
1: 当初の計画以上に進展している
現在、植物組織内での定着が顕著に減少した変異株について解析を進めているが、候補となる遺伝子の欠損株でも表現系が確認できており、研究は進展していると考えている。
今年度は遺伝子欠損株のDsRED蛍光標識株を作成し、候補遺伝子が欠損することで菌の挙動に及ぼす影響を蛍光顕微鏡および共焦点顕微鏡を用いて解析する。また、これらの成果をまとめて論文を投稿する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Plant and Cell Physiol.
巻: 57 ページ: 1791-1800
10.1093/pcp/pcw104