研究課題/領域番号 |
14J40135
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
湯山 育子 国立遺伝学研究所, 生命情報研究センター, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 造礁性サンゴ / 細胞内共生 / 白化現象 / 褐虫藻 / RNA-seq |
研究実績の概要 |
造礁性サンゴは共生する褐虫藻の種類によりそのストレス耐性が変化することが分かっている。通常の成体サンゴにはクレードCというタイプの褐虫藻が共生するが、高温時に生存するサンゴにはクレードDが共生することが報告されている。そのため、褐虫藻クレードDはストレスに強い特徴を持つと考えられていた。申請者は過去の実験で褐虫藻クレードCとDそれぞれ共生した稚サンゴを作成することに成功しているため、これらのサンゴを用いてサンゴ-褐虫藻の共生の仕組みとサンゴの白化現象の分子メカニズムを明らかにすることを目的に実験を行った。 造礁性サンゴであるウスエダミドリイシのプラヌラ幼生を採集し、ポリプに変態させた後、褐虫藻培養株(CCMP2556 (clade D) とCCMP 2466 (clade C1))を海水中に混入しサンゴに共生させた。そして、褐虫藻導入後10日目、20日目のサンゴを遺伝子発現解析(RNA-seq)用に固定した。現在、RNA-seq解析によりサンゴと褐虫藻の細胞内共生に関与する遺伝子(褐虫藻の共生で発現変動する遺伝子)の単離を試みている。これまでclade Cの褐虫藻の共生で変化する遺伝子が10日目のサンゴで1650個、20日目のサンゴでは215個検出された。また、clade D 共生では共生10日目に6425個の遺伝子、20日目には15711個の遺伝子が発現変動する遺伝子として検出された。現在、各遺伝子のデータベース検索を行い、それぞれの遺伝子がどのようなタンパク質をコードし、どのような機能を持つのか解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国立遺伝学研究所にて、実際に実験に使用できる造礁性サンゴの維持に成功し、褐虫藻を共生させることができている。また、それらのサンゴを使って、RNA-seq解析を実施し、実際に共生状態と非共生状態のサンゴで発現変動している遺伝子の同定ができた。造礁性サンゴの維持は難しく、実験的に飼育維持することが困難であるが、新しく設置した実験環境で飼育に成功し目的とする実験ができたことは大きな進展であるといえる。国立遺伝学研究所に所属し、他研究者と意見を交換することで、より効率的にサンゴの遺伝子発現解析を行う技術を確立し、今後の研究発展の基盤造りができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は造礁性サンゴの白化やストレス応答に関与する遺伝子の同定を行う。 ウスエダミドリイシのプラヌラ幼生を採取し、人為的にポリプ(稚サンゴ)に変態させる。この稚サンゴにクレードCとDの褐虫藻株をそれぞれ共生させる。共生藻を混入して約4ヶ月後にクレードCとDそれぞれが高密度に共生することがわかっている。そのため、褐虫藻混入後約4ヶ月目のサンゴを使用してストレス暴露実験を行う。海水を32度まで段階的(0.5℃/day)に上げ、サンゴの白化の程度を観察する。そして白化が始まるタイミングでサンゴを固定し、遺伝子発現解析用に固定する。白化が始まるタイミングは褐虫藻数、光合成効率(Fv/Fm値)を測定して、その変化を見て決める。それぞれのサンゴで、白化時に発現変動する遺伝子を同定し、サンゴの白化現象の仕組みや共生褐虫藻によりストレス耐性が異なる原因を明らかにする。 一方で、細胞内共生に関与する褐虫藻の遺伝子の同定も行う。共生藻を混入して約4ヶ月後、クレードCとDの褐虫藻それぞれが高密度に共生したサンゴを使用する。サンゴを固定したのち、ホモジナイズし、サンゴ体内に共生している褐虫藻を単離する。サンゴから単離した褐虫藻と液体培地で培養した褐虫藻のRNAを抽出し、それぞれで発現している遺伝子を比較する。サンゴ体内に共生している際、褐虫藻側でどのような遺伝子が発現するのかを明らかにする。 また、26年度の実験結果をまとめ、サンゴと褐虫藻の細胞内共生時に発現変更する遺伝子についての論文を投稿する。
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