研究課題/領域番号 |
14J40144
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
白幡 真紀 東北大学, 教育学研究科, 特別研究員(RPD)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
キーワード | キャリア教育 / キャリアガイダンス / キャリア / イギリス / 教育・訓練政策 |
研究実績の概要 |
本研究は、イギリスのキャリアや雇用可能性に関連する公的支援枠組みの構築について明らかにするのが目的である。本年度は、主に現保守党・自由民主党連立政権の政策分析に焦点を当て、次の3点について研究を進展させた。 第一に、現保守党・自由民主党連立政権における雇用可能性向上をめぐる政策方向性について明らかにしたことである。連立政権下では個人を支援する企業、教育機関、ボランタリー団体などに政策の重心を置き、彼らの責任分担とコスト分担が強調されていることが明らかとなった。しかし、厳しい財政の下でコスト負担を社会に求めつつ、リスク層の支援やスキル水準の向上の質の確保に問題点が残ることを指摘した。 第二に、同連立政権下での中等教育段階のキャリア教育・ガイダンスおよび成人のキャリア・ガイダンス改革の枠組みについて明らかにしたことである。新たな支援体制においては学校や個人を取り巻く地域社会を中心とした外部機関へ責任とコストを共有することにより、より広い支援の枠組みを構築しようとしていることが明らかとなった。こうした方向性は上記の教育・訓練をめぐる公共政策の動向とも一致する。 第三に、同連立政権の中等学校の多様化政策についての概要を明らかにしたことである。上記中等学校のキャリア教育・ガイダンスの支援枠組みに関わる課題を明らかにするには、同政権がもっとも力を入れている中等学校の多様化政策の検討が欠かせない作業である。現政権は水準向上のために特に学校の多様化に力点を置き、学校の選択肢を増やす中で水準の向上を図ろうとする。この質保障を担うのが学校評価であり、この改革をとおした全体的構造の課題を明らかにした。 2月18日~27日に渡英し、National Careers Guidance Show Northに参加、専門家への面接聴取調査など情報収集を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度は研究計画に則り、イギリスのキャリアと雇用可能性の政策枠組みとその方向性、課題について明らかにし、その成果を発表した。 第一に、現保守党・自由民主党連立政権における雇用可能性向上をめぐる政策方向性について明らかにしたことである。この知見は、研究論文「イギリスにおけるスキルと学習の水準向上に関する公的支援の課題―保守党・自由民主党連立政権下の政策動向の分析から―」として東北大学教育学研究科年報に発表した。 第二に、同連立政権下での中等教育段階のキャリア教育・ガイダンスおよび成人のキャリア・ガイダンス改革の枠組みについて明らかにしたことである。これらの知見をまとめ、国内での学会・研究会での発表を2件行った。
|
今後の研究の推進方策 |
26年度はキャリアや雇用可能性の政策枠組みをめぐっての政策方向性の解明に焦点を当てて調査研究を行ったが、特にキャリア教育とキャリア・ガイダンスをめぐる実質的状況についてはさらなる調査が必要である。特に、連立政権下では地域社会が若者のキャリアや雇用可能性育成に関わる重要なアクターと位置づけられている。学校外における地域社会の諸機関は、支援枠組みの構築にあたり、どのような役割を果たしているのか。27年度以降は、主にこのキャリア教育やキャリア・ガイダンスに関する外部リソースに関する調査分析を行う予定である。 イギリス(イングランド)においては、政府系機関であるキャリア・サービス以外にも民間の「キャリア・カンパニー」とよばれるキャリア情報を提供する営利・非営利組織が多く存在しガイダンス支援も行っているが、これまで民間のキャリア・カンパニーがどのような役割を果たしているかについては多くが明らかになってこなかった。このことを明らかにするのが今後の課題である。 そのため、今後は引き続きWebを含む文献・資料収集およびその分析を行いつつ、訪英調査により当事者の見解を聴取する予定である。
|