研究課題/領域番号 |
14J40205
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
福島 恵 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | ソグド人 / 北朝隋唐 / 墓誌 |
研究実績の概要 |
本研究では、ソグド人がシルクロード交易に現れて以降、その交易をほぼ独占し、さらには武人として中華王朝に仕えて多大な影響力を有した状態から、10世紀以降に民族と民族との間に消えていくというソグド人の活動の盛衰の諸相を墓誌史料を用いて明らかにする。2014年度の実績は以下のとおりである。 (1)墓誌の研究基盤情報の整理による墓誌史料の性格の解明 「①ソグド人の墓誌史料とはどのような史料群なのか」について、当初の計画の通り、ソグド人墓誌を収集し、墓誌の情報のデータベース化・テキスト化を行うことができた。2014年度は、毛陽光・余扶危主編『洛陽流散洛陽流散唐代墓誌彙編』(上・下巻、国家図書館出版社、2013年12月)や趙力光主編『西安碑林博物館新藏墓誌續編』(上・下巻、陝西師範大学出版総社有限公司、2014年7月)などの拓本集が現地中国より出版されたことにより、これまで未公開であったソグド人の墓誌が数多く公開となった。以上を収集・データ化を進めることで、2015年3月時点で、北朝~北宋時代のソグド姓墓誌は366件で、そこから457人分の情報を得ることができ、そのうち169人はソグド人であるといえることが判明した。 (2)ソグド人の活動動向とそれが与えた影響。 これまでの研究で蓄積してきたソグド人墓誌データベースと比較・照合することから、新たな見地が得られた「康令惲墓誌」について、2014年度は精読して訳注を作成した。また、その成果は、「青海シルクロード上のソグド人―「康令惲墓誌に見る〓州西平の康氏一族―」」として明治大学で開催された「第7回東アジア石刻研究会」や中国銀川で開催された「第2届絲綢之路国際学術討論会“粟特人在中国:考古発現与出土文献的新印証”」で報告し、論文としても羅豊・栄新江編著『絲綢之路上的粟特人』(寧夏文物考古研究所、2015年刊行予定)に掲載予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究方法は、以下のとおりである。これまでの研究に継続して陸続と出版・報告されるソグド人墓誌の情報を収集して、既に得ているソグド人墓誌データベースに追加する((1)-①)。新たに得た墓誌とデータベースの情報を照合することでソグド人の活動について新たな見地を見出し、必要に応じて墓誌を精読して訳注を作成し、その史料としての意味を論文として発表する((2))。また、ソグド人墓誌の史料としての位置づけを明確にするため、申請者が代表を務める科研費(若手研究B:「隋唐期における墓誌史料の研究基盤情報の整理と分析」:H23-27(当初の計画より1年延長))終了後は、ソグド人以外の墓誌についても各種の目録・拓本集・録文集などの情報をデータベース化し、傾向分析する((1)-②)。2014年度の到達度は以下の通りである。 (1)-①については、前述したように、当初の計画の通りソグド人墓誌を収集し、墓誌の情報のデータベース化・テキスト化を行うことができた。収集・データ化を進めることで、2015年3月時点で、北朝~北宋時代のソグド姓墓誌は366件で、そこから457人分の情報を得ることができ、そのうち169人はソグド人であるといえることが判明した。 (2)については、これまで蓄積してきたソグド人墓誌データベースと比較・照合から、新たな見地が得られた「康令惲墓誌」を精読して訳注を作成した。その成果は、前述のように中国で開催された「ソグド人学会」で報告し、まもなく刊行予定である。この墓誌の考察の成果は、前稿の「唐の中央アジア進出とソグド系武人―「史多墓誌」を中心に―」(『学習院大学文学部研究年報』59、2013年3月)と共通するところがあり、これまで課題であった植民聚落を拠点とし、商業活動を生業としていたソグド人がその後どのような運命を辿るのかという問題の解明にむけて大きな前進となった。
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今後の研究の推進方策 |
前述した本研究の研究方法に従って、2014年度に引き続き、2015年度は以下を実施する。 (1)-①:ソグド人墓誌の収集、墓誌の情報のデータベース化・テキスト化、ソグド人墓誌の解題の作成。 (2):新たに収集したソグド人墓誌の情報をソグド人墓誌データベースと比較・照合する。その際、新たな見地が得られた場合は、その墓誌を精読して訳注を作成する。本2015年度は、特に「花献墓誌」および「花献妻安氏墓誌」の訳注を作成する。花献とその妻の安氏の墓誌の存在は、昨年公表されたばかりで、墓誌から彼らが洛陽在住の景教徒であることが判明した。近年、洛陽からは景教徒(多くはソグド人)に関する史料の出土が相次いでおり、筆者はこれについて2014年度に発表した「長安・洛陽のソグド人」(『アジア遊学:ソグド人と東ユーラシアの文化交渉』2014年8月)で紹介したが、花献とその妻安氏の墓誌はこれらの発見に続くものである。筆者は、景教の新出土史料の紹介とそこから見える問題点などについて、本2015年度の夏季開催の唐代史研究会のシンポジウム(テーマは宗教)にて報告するよう課題をいただき、現在はその準備を行っているところである。
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