研究概要 |
本年度は,本研究の要の超精密結像ミラー形成を目指して,ミラーの特殊多層製作技術と評価技術の開発を進めた.また,同ミラーの反射特性を精密評価する軟X線干渉計の構築を進めた. 具体的には,超高真空IBS装置の曲面基板面内周期膜厚分布制御シャッター機構を,ボールネジステッピングモーター駆動方式からリニアーモーター直線駆動方式へ変更し,速度制御関数の上限加速度を0.3m/s^2から5m/s^2に改善した.これに並行して,IBSの成膜レートを上げ,スパッタリングの空間特性を安定化する目的で試行してきたデュアルイオン銃方式を本格的に導入した.また,イオン銃のスパッタレート安定化の最適条件を探索し,試作・評価をくり返した. 評価では,小角回折角度分布と軟X線反射率分光スペクトルから周期膜厚を0.1%の精度で決定する方法の開発研究を進めた.この結果,改善したシャッター駆動制御で凹面基板に周期膜厚分布補正多層膜を成膜して,放射光を光源とした軟X線反射率計測によって精密計測して,直径10cm基板で±0.5%の分布制御を達成した. これらに並行して,軟X線反射率減少の主要因である多層膜の表面粗さを計測するために,15cmまでの試料が測れる走査型プローブ顕微鏡を備品購入し,基板ホルダー調整によって反射スペクトルデータ解析の粗さデータに対する比較検証データを得る準備を終了した.IBSのスパッタレートの日差変動によるnm周期膜厚誤差を0.2%以内に抑える目的で,pm感度のレートモニターとしてトラッキングエリプソメータを備品購入し,成膜装置への組み込みを完了した.さらに,レーザープラズマ軟X線光源反射率計による高精度反射率計測を自指して,入射光量モニター部の改造とそれに伴うエレクトロニクス処理系の改造を終了した. また,多層膜の物理に関する国際会議を平成16年3月に札幌で開催し,国外35名,国内30名の参加を得た.
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