1.計15の発生段階(受精卵、2細胞期、4細胞期、8細胞期・・・)のホヤ胚からポリ(A)^+RNAを抽出・精製し、Cy3またはCy5で標識したcDNAプローブを作製した。 2.ホヤの全遺伝子の約85%に対応する2万のスポットを載せたオリゴチップを用いて、15の発生段階の胚の遺伝子発現量を解析した。各発生段階のRNA量を受精卵のサンプルと比較することによって、発生段階を通じての遺伝子発現量の増減を追跡した。競合ハイブリダイゼーション実験は全て完了し、データを99のクラスターに分類した。現在、ある程度以下の発現の増減を無視するなどというようなフィルターをかけて、できるだけ意味のあるデータを抽出できるようクラスタリング法を検討中である。オリゴチップ解析は、京大・佐藤矩行教授、北大・安住薫博士と共同で行った。またクラスタリングのアルゴリズムについては北大工学部・原口誠教授のご協力をいただいている。 3.オリゴチップ解析により、8〜32細胞期までのごく初期の胚で発現が上昇する50クローンほどピックアップし、in situ解析用のRNAプローブを合成した。これまでに知られている発生制御遺伝子のほとんどは32細胞期よりも後に転写が活性化するので、今回発見した遺伝子は、モザイク発生をするホヤ胚において細胞の運命決定カスケードの最も上位で機能するzygoticな遺伝子の可能性もある。現在、これらの遺伝子のin situ解析を行っている。 4.昨年度の特定領域研究の補助を受けて行ったホヤ胚レチノイン酸標的遺伝子のマイクロアレイ解析の結果については、レチノイン酸受容体・合成酵素・分解酵素の発現・機能解析と合わせて数編の論文として発表した。
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