研究概要 |
1.これまでに線虫C. elegansの約6,300遺伝子についてRNAi-by-soaking法による表現型の一次解析を完了し、約900の胚性致死遺伝子を同定した。そのうち約650遺伝子について、二次解析として微分干渉顕微鏡による最終表現型解析を終えた。RNAiによる表現型は情報科学的に処理する目的で、われわれが開発した表現型プロファイリング法(複数の独立な指標についてあらかじめ定義した語彙をて記述)によって記録した。さらに、この表現型プロファイルの類似性に基づいて遺伝子クラスタリングを行った。この手法は機能未知遺伝子の機能予測に有効であることが確認できた。胚性致死表現型プロファイルおよび遺伝子クラスタリングデータについては、公開用データベースを作成した。また、胚性致死遺伝子の孵化後発生における機能を解析する時期特異的RNAi法(L1-soaking法)を確立し、約350遺伝子についての解析を完了した。また、一次解析で不稔となった遺伝子の生殖細胞の表現型も解析した。 2.ゲノム/EST情報から推定され、かつ、過去に線虫研究者が分離していない転写制御因子を中心とする遺伝子の欠失変異体の網羅的分離を行い、361遺伝子の変異体を分離した。全転写因子の半数以上を我々の研究室でカバーしたことになる。一方で、代表的な転写因子の変異体の機能解析を行った。Etsファミリーのホメオボックス転写因子変異体の表現型解析を行い、頭部のサブセットの少数ニューロンで発現していること、多種類の感覚受容が異常であること、体の大きさが小さいこと、運動性が低下していることなど、多彩な表現型が見いだされた。
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