私達は網羅的に疾患発症に関する遺伝子多型の相乗作用の有無を検討するため、数十個の候補遺伝子の集合から、2つの遺伝子多型を取り上げ、1つの遺伝子多型で層化した後、他方の遺伝子多型と疾患の相関の検定と、遺伝子多型での層化前後の遺伝子多型対疾患の相関テーブルの適合度の2つの統計量を計算し、これを全ての可能な遺伝子多型ペアについて自動的に行うプログラムを開発し、遺伝子多型間の相互作用の検出を試みた。この方法によって、日本人喘息では、補体C3とロイコトリエン受容体CysLT2の遺伝子内での多型の相互作用(リスクハプロタイプの存在)が見出された。また、日本人小児喘息で、補体C5とInducible T cell kinaseの遺伝子間相互作用が見つかった。 次に喘息との相関を単独で示す候補遺伝子の遺伝子多型と遺伝子相互作用を加えてロジェスティック回帰式を作り、疾患の発症をどの程度説明できるかを検討した。イギリス人成人喘息では、4つの単独遺伝子と5遺伝子多型相互作用の回帰式によって、個人ごとの疾患の予測値を計算し、その大小によって、10グループに分けて、実際の患者、コントロールの人数を分けて検討した。最も予測値の高いグループ(グループ10)では、90%の者が実際に患者であるのに対し、最も予測値の低いグループ(グループ1)では、90%が正常であった。予測値が0.5付近のグループでは、ほぼ半数が患者となっていた。すなわち、疾患発症予測値の大小と実際の疾患の発生率は良い相関を示していた。日本人小児喘息では、4遺伝子と1相互作用、成人喘息では2遺伝子が回帰式に用いられ。日本人では、補体のハプロタイプが大きく疾患の有無に関与しているため、イギリス人より少ない遺伝子数でイギリス人での成績と同等な結果が得られた。 以上の事から、ロジェスティック回帰を用いた多遺伝子の同時解析で、疾患発症のリスクの大小を表現可能であることが示唆された。
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