本研究では、新規の1型糖尿病遺伝子として同定されたCblbのヒト1型糖尿病の発症における役割を明らかにすると同時に、Cblbが関与するシグナル経路を網羅的に解析することにより、ヒト1型糖尿病の遺伝素因を決定し、その発症機序を分子レベルで解明することを目的とする。具体的には、(1)ヒト1型糖尿病患者におけるCblb遺伝子変異の同定と機能解析、(2)Cblb遺伝子ハプロタイプとHLAハプロタイプとの関連解析、(3)Cblbが関与するシグナル経路の網羅的解析とCblb関連遺伝子群のヒト1型糖尿病患者における遺伝子解析、(4)Cblb関連シグナル経路の破綻によるヒト1型糖尿病発症機序の分子レベルでの解明を行う。 今年度は下記の項目について研究を実施した。 (1)ヒト1型糖尿病患者におけるCblb遺伝子変異の同定と機能解析 約200例の1型糖尿病患者についてCblb遺伝子の塩基配列を決定し、遺伝子多型および変異を検索した結果、6個のアミノ酸置換を伴う変異を含む20個以上のSNP等の多型および変異を同定した。現在、同定した変異タンパクを作製し、PI3Kとのin vitroでの結合およびin vivoでのユビキチン結合活性を解析している。 (2)Cblb遺伝子ハプロタイプとHLAハプロタイプとの関連解析 上記(1)の結果をもとに、Cblb遺伝子座領域について日本人における連鎖不平衡ブロックを明らかにし、代表的なSNPを用いて相関解析およびハプロタイプ解析を行う。また、HLAハプロタイプとCblb遺伝子ハプロタイプの組み合わせと1型糖尿病発症との関連を検討する。
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