研究課題/領域番号 |
15012219
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
那波 宏之 新潟大学, 脳研究所, 教授 (50183083)
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研究分担者 |
豊岡 和彦 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (90345504)
高橋 均 新潟大学, 脳研究所, 教授 (90206839)
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キーワード | 精神疾患 / DNAチップ / マイクロアレイ / 遺伝子プロファイル / 分子診断 |
研究概要 |
統合失調症は人口の1%に発症する難病であるにもかかわらず、いまだ生物学的診断法もないためにその科学的定義も不明確な疾患である。統合失調症は脳内の疾患であるにもかかわらず、末梢血にも影響が及んでいて血液中のサイトカイン濃度にも同様の変化があることが判明している。末梢血液の遺伝子変化が脳内病態を反映しているかどうかには疑問は残るものの、患者の診断に利用できる可能性がある。この原理を利用して高率で正確に診断できるようにするためには、統合失調症の末梢血マーカー分子を複数同定し、それらを組み合わせることが有効と考えられた。昨年度に引き続き、更にサンプル数を追加して末梢血マーカー分子を統合失調症患者の単核球より同定することを試み、その他精神疾患との分別能や治療との関連性を分析した。 脳内に比べ各遺伝子のRNA濃度は、高いことが予想されたので、感度はやや低いがハイスループットの信頼性の高い検索できるDNAチップを用いて、約12000個の遺伝子発現プロファイリングを実施した。サンプルは患者・家族の同意のもと慢性統合失調症患者12例、急性統合失調症患者6名、健常者コントロール12例の血液から分離した単核球のRNAを用いた。その結果、各患者群と健常者の比較で144種類mRNAが統計学的有意に2倍以上の変化を呈した。変化した遺伝子の中には、SNP連鎖解析より統合失調症との関連が示唆されているニューレグリン1遺伝子も含まれていた。急性統合失調症患者での遺伝子発現変化を呈する遺伝子を含めS6タンパクキナーゼなど計16遺伝子に対して、RNAレベルの1次線形判別分析を実施させると、極めて奇麗な診断が可能であった。このような1次判別分析式に、大欝患者やパニック障害の患者データを適応しても、弁別は可能であった。これらの結果は統合失調症の発症に伴い、末梢血球にも少なからぬ影響が遺伝子発現レベルで出ていることを示している。
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