研究概要 |
本研究は、リガンド脂質を認識し脂質二重膜に直接相互作用するタンパク質が、本来の姿で相互作用し機能する様子を正確に決定する方法の開発を目的とする。当研究室の開発した、NMRを用いた転移交差飽和法によるタンパク質複合体相互作用界面決定法は、不均一な巨大分子との相互作用解析を可能とした。転移交差飽和法を、NADPHオキシダーゼに存在するp47PXドメインと、そのリガンドであるホスファチジルイノシトール(3,4)2リン酸(以下PI(3,4)P2と表記する)を含むリポソームとの相互作用解析に適用して検討を進めている。 まず、p47 PXドメインの発現・精製系を確立して安定同位体標識タンパク質を取得し、三重共鳴NMRの測定とアミノ酸選択的標識による主鎖連鎖帰属を終了した。 次に、p47 PXドメインにおけるPI(3,4)P2含有リポソームとの相互作用部位を転移交差飽和法に基づいて同定した。明らかになった相互作用部位は、変異体と表面プラズモン法のみを用いたWilliams RLらのグループの結果とは全く異なった部位であった。さらに、Williamsらはホスファチジン酸結合部位を示しているが、我々の結果では、ホスファチジン酸の結合はPI(3,4)P2に比較して非常に弱く、PI(3,4)P2存在下ではp47 PXドメインとは相互作用しない。また、他のPXドメインにおいて、detergentを用いた結合実験によって示されたmembmne insertion loopは、p47 PXドメインにおいてはリポソームとの相互作用が観測されなかった。データ精度の向上と変異体を用いた検討をさらに進めている。
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