研究概要 |
本研究では大腸菌をモデルとして、全2成分制御系が関わる細胞機能の全体像を解析した。その結果、大腸菌に存在する約30種類の2成分制御系のほぼ全てに関して、感知するストレスシグナルの同定が進み、それらは代謝シグナル応答(炭素、窒素、呼吸関連化合物など)とイオン/金属ストレス応答(Fe, Cu, Mg, Zn, K, Pなど)ならびに多面的ストレス応答(細胞表層ストレス、酸化ストレス、浸透圧ストレスなど)に大別できることを示した。さらにマイクロアレイやSELEX法を用いた解析により、各2成分制御系により制御される遺伝子群(レギュロン)の同定とレスポンスレギュレーターの認識配列の同定ならびに推定が進んだ。 他方、これまでの解析から存在が示唆されてきた2成分制御系間のネットワークに関する研究では、精製タンパク質を用いた網羅的リン酸化反応解析を行い、クロストークの存在を明らかにした。さらに、ヒスチジンキナーゼの自己リン酸化、ヒスチジンキナーゼからレスポンスレギュレーターへのリン酸転移、リン酸化型レスポンスレギュレーターの脱リン酸化の各反応ステップによって、それぞれの2成分制御系が特徴づけられることが明らかとなった。今後は、これらin vitroでの解析成果をin vivoの各2成分制御系の働きとの関連で解析する必要がある。 個別の解析では、嫌気状態の関知に関わる2成分制御系が鞭毛合成の制御に関与することなどが明らかとなった。 本研究の過程で、全2成分制御系遺伝子の欠失株セット、全遺伝子の高発現セット、全タンパク質 精製用の発現プラスミドセットと精製タンパク質、大腸菌内two hybrid解析用プラスミドセット、各2成分制御系の活性化状態をモニターするためのレポーター遺伝子セットなどの重要な研究リソースも蓄積した。
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