本研究の目的は、分裂酵母の胞子形成関連遺伝子の網羅的なスクリーニングにより得られた遺伝子産物について時空配置を決定することである。本年度の成果は以下の2点である。 1)新たな胞子形成関連遺伝子のスクリーニング:新たな胞子形成必須遺伝子を同定する目的で、減数分裂特異的なcDNAとGFPとの融合ライブラリーのスクリーニングを昨年度から引き続き行った。その結果、計2万クローンから特定の細胞局在を示すクローン1775個を単離した。うち、52個の遺伝子について、シークエンスデータから産物を同定した。さらに、減数分裂特異的転写因子Mei4の栄養細胞での強制発現により誘導される遺伝子をDNAマイクロアレイにより調べ、約50個の遺伝子を新たに同定できた。 2)胞子形成関連遺伝子産物の解析。スクリーニングにより同定された遺伝子産物について、細胞内局在を詳細に調べた。新生前胞子膜の開始前駆体に局在するタンパク質について注目し、特に、膜小胞との融合に働くt-SNAREタンパク質が重要な役割を持つことを分子遺伝学の手法を交えて明らかにした。さらに、細胞膜コンパートメントの形態形成に重要と推定される膜先導領域(Leading edge)を構築するタンパク質複合体に焦点を当てて解析し、アクトミオシン系のタンパク質が局在することを明らかにした。一方、前胞子膜の形成と減数分裂の連関に働くタンパク質について性格付けを行い、分裂装置に局在するタンパク質やスピンドル構築チェックポイントに係わるタンパク質が関与することを解明した。これまでに同定したスピンドル極体に局在し胞子形成に必須のタンパク質群との具体的な関わりを明らかにすることが今後の目標となろう。
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