ケンブリッジ大のDavid J.Walesらと共同で「ファネル型エネルギー地形は(非ファネル型エネルギー地形に比べて)どれくらいの少数自由度に縮約可能であろうか」ということを主成分解析とエネルギー停留点解析により調べた。その結果、ファネル型エネルギー地形では、非ファネル型に比べて、より少数自由度に縮約可能であること、ならびに、ファネル型では非ファネル型に比べて最安定構造近傍のエネルギー地形のトポロジーは"摂動の下"保存しやすい傾向があることを明らかにした。エネルギー地形上の凸凹(ruggedness)が存在することで、反応が加速される現象が理論・実験の両面から近年指摘されているが、その理論的な解釈は充分与えられていない。我々は純粋なRuggednessに起因するキネテックスの変化のみを抽出する単純なモデルを構築し、ガウス定常過程を仮定したmean first passage time解析よりruggednessの存在による蛋白質の折れ畳み過程の加速効果に対する物理的な解釈を与えた。その結果、窪みが存在することで始原系から窪みへ到達する過程は(窪みの深さがある程度の深さまで)反応は加速し、窪みから生成系へ至る過程は減速されること、前者で反応が加速するのは、窪んだ中間状態から始原系へ逆流することが抑制されるため実効的反応速度は増大するためであること、また、窪みは生成系よりにあるほうが始原系よりにあるよりも反応は加速されることなどを明らかにした。このほか、蛋白質ダイナミックスの主成分空間の多重エルゴード性や溶媒自由度の動的効果に関する研究を行った。 研究成果に関しては、国際会議4件(うち、2件は招待講演)および日本蛋白質科学会、日本物理学会、分子構造総合討論会などで発表し、学術雑誌Adv.Chem.Phys.の編集と総説執筆を行った(2004年度以内に出版される予定)。
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