本研究の目的は、膨大なタンパク質の立体構造の情報をその分子機能の理解や推定に役立てるような手法とデータベースを開発することである。研究代表者は昨年度から立体構造比較サーバMATRASの開発を進めており、今年度も一層の機能の拡充を行った。立体構造比較は、構造から機能を推定するための最も基本的な方法であり、特に構造ゲノム科学の枠組みにおいて構造比較サーバを維持することの重要性は高い。今年度、開発したMATRASサーバの詳細をNucleic Acids Research誌に発表した結果、構造比較サーバの一つとして国際的にも認知されつつあり、現在、国内外から多くの検索依頼がある。さらに今年度は、構造から分子機能を理解するための次の3つの研究開発を行った。一つは、構造未知のアミノ酸配列から立体構造予測を行う方法の整備である。MATRASに配列比較の機能を追加したほか、2次構造予測を利用したPSI-BLASTの改良についても研究を行った。もう一つは、タンパク質間相互作用の相互作用サイトの予測の試みである。複合体の立体構造を決定することは一般に困難であるため、単量体の立体構造からその相互作用を予測する試みは重要である。まず、既知の複合体の相互作用サイトのアミノ酸分布の統計からシンプルなスコアを導出し、それを用いた単量体の相互作用サイトの予測法を行った。最後に、タンパク質表面のポケット部を認識するためのアルゴリズムの開発を行った。低分子を結合するタンパク質表面の多くは凹状のポケット型をしており、こうしたポケットを自動的に認識するプログラムは、低分子結合部位を推定する際に有用であると考えている。今後は、これら開発中の手法をより改良し、最終的にはMATRASサーバに統合して、機能推定のためのより高機能のサーバ・データベースを作成しようと考えている。
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