研究課題
本年度は細胞内小器官(オルガネラ)のひとつであり、細胞質で合成されたタンパク質が脂質二重層を越えて輸送されるタンパク質輸送のモデル系として興味深いペルオキシソームを選び、ペルオキシソーム膜タンパク質に特異的な抗体を結合させた磁気ビーズにより単離精製したペルオキシソームを用い、質量分析法を用いた手法により解析することで、その構成タンパク質の同定を行った。また、抗体ビーズに結合したままでペルオキシソーム膜を破裂させ、弱アルカリにより洗浄することでペルオキシソームの膜画分を調製した。両者のプロテオーム解析から幾つかの新規タンパク質を同定した。その中で分子シャペロンとしての機能を持つLonプロテアーゼのペルオキシソーム特異的アイソフォームを発見した。Lonプロテアーゼに対して作成した特異的抗体により、このタンパク質がペルオキシソームのマトリックスに存在していることを確認した。また、ペプチドのMS/MS解析で得られる部分アミノ酸配列を含む構造情報を、直接ゲノム配列にマップするためのソフトウェアツールを開発し、それらを用いて、様々な微生物のプロテオーム解析データをゲノム配列にマップした。その結果、プロテオミクスのデータをゲノム配列にフィードバックすることで、ゲノム解析で重要な2つのポイント、シークエンシングとアノテーション、それぞれに有用なデータが得られることが明らかにした。また、光合成細菌であるらん藻のプロテオームを解析し、光強度に応答し変化するタンパク質群を同定した。これらのデータを既存のDNAアレイのデータと比較することで、らん藻における遺伝子発現ネットワークの解析を行っている。
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