ゲノム機能の解明の一端を担うため1)計算科学的なアブローチから、転写因子それぞれの結合部位を予測する、2)共通の転写因子をもつ遺伝子をクラスタリングすることによって遺伝子間の相互作用を推定すること、この二つを目的として本研究を行った。今年度は、1)に関して進展した。本研究では、DNA結合蛋白質とDNAの複合体から統計ポテンシャルを求め、そのポテンシャルを用いてゲノム上からDNA結合蛋白質のターゲット部位を探す。そのため、まず、年々増加しつづけている蛋白質-DNA複合体の立体構造に対応して、自動的に導出し、定期的にアップデートするシステムを構築した。その結果、冗長性のない複合体を150得た。その複合体の解析を行い、統計ポテンシャルを更新した。また、DNA結合蛋白質は、ゲノムのORFの上流・下流に結合して、転写を制御していることが知られている。そこで、任意の長さの上流・下流のDNA配列を抽出することを行った。その抽出した配列に対して、更新したポテンシャルを用いて、蛋白質のフォールドタイプを探すスレッディングのアナロジーにより、DNA結合蛋白質のターゲット部位を探すことを行った。どの蛋白質がどの遺伝子を制御しているか、現在解析中である。また、更新した統計ポテンシャルを用いて、さまざまなDNA結合蛋白質とそのターゲット配列の認識機構の違いを定量的に評価することができた。
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