我々は運動神経をモデル系とし、その経路選択・標的認識機構を、こうした過程に関与しうる因子を探索し解析することから明らかにしていこうとしている。本年度は、LMCm運動ニューロンに選択的に発現する因子として新たに単離した因子FY29について、その基本的な性質を明らかにした。FY29は複数のIgドメインをもつ未解析の細胞外タンパクであり、その細胞外分泌性を検討したところ、GPI付加を受け、細胞膜上にとどまることが明らかとなった。また、遺伝子の構造から、GPI付加シグナルを欠いた分泌型の存在が予測された。この因子の結合する領域を調べたところ、軸索の走行する領域にheterophilicに強く結合し、そのふるまいに何らかの影響をおよぼすことが推測された。そこで、explantを用いたin vitro assayをおこなった結果、軸索の運動の方向性には影響を与えないが、そのfasciculationを阻害することが明らかとなった。また、in ovoで表在神経系に強制発現させると、そのfasciculation、path findingに異常が見られ、また、commissure neuronのdorsalmarginal zoneへの集合を阻害することから、この因子は、fasciculationの調節になどに関わる新規のaxon guidance moleculeであることが強く示唆された。さらに解析を進めた結果、この因子は運動神経の標的である筋肉とも強く結合し、その標的認識過程にも深く関与していることが推測された。
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