研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis以下ALS)は神経疾患のなかで最も過酷な疾患とされており、早期に病因の解明と有効な治療法の確立が求められている。本研究ではALSの新しい動物モデルとして確立したヒト変異Cu/Zn SOD遺伝子導入ラット(以下Tgラット)を用いて、再生医療の開発を念頭に内在性神経前駆細胞の解析を開始した。これまでにTgラットにブロモデオキシウリジン(BrdU)を投与して脊髄の増殖性細胞を標識、病態下における脊髄神経前駆細胞の増殖と分化を検討した。その結果,Tgラットでは運動ニューロン脱落前より有意に脊髄神経前駆細胞が増殖していたが、その多くはグリア系細胞に分化していることが示された。 本年度は、増殖している脊髄神経前駆細胞の挙動をさらに明らかにするため、(1)増殖した神経前駆細胞の局在の検討、(2)神経幹細胞に近い、より幼若で未分化な細胞のマーカーを共発現するBrdU陽性増殖性細胞の検索、(3)外来性の再生因子投与による内在性神経細胞の賦活の試みを行っていた。これまでの結果では、Tgラットでは前角を含めた灰白質・白質にGFAP陽性、APC陽性のアストログリア、OX42陽性のマイクログリアが広汎に増殖していた。またnestin陽性細胞が中心管上衣層と白質に認め、BrdU/nestin二重陽性細胞も確認され、より未分化な段階の細胞の存在が示唆された。このような未分化な細胞をうまく分化誘導し、組織修復に役立てる方法を探っていくことが新規治療法につながる可能性がある。
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