I型膜タンパク質と推定されているニカストリン(NCT)は、プレセニリン(PS)高分子複合体構成因子のひとつであり、gammaセクレターゼ活性に必要である。NCTの機能として、全長型PSの安定性に寄与することが報告されている。本研究では、NCTがどのようにPS複合体へ重合していくのかを調べるため、PSとの結合に関与するNCTドメインについて検討した。方法として、NCTと同じI型膜タンパク質で糖鎖修飾を受けるアミロイド前駆体タンパク質(APP)とNCTのキメラ変異体を作成した。NCT/APPキメラをHEK293細胞に過剰発現させて、PSとの結合を生化学的に調べた。結果として、Endo-Hを使用した実験よりキメラ変異体はすべて野生型NCT、APPで認められるような成熟型の糖鎖修飾を受け、小胞体からゴルジ装置へ輸送されていることを確認した。次に、免疫沈降法による実験より、PS1-N末端断片との結合は、NCT細胞質ドメインを置換したキメラで、ほぼ野生型NCTと同様の結合を示し、NCT管側ドメインを置換したキメラでは、PS1-N末端断片との結合が減弱している所見を得た。一方、このNCT管側ドメインを置換したキメラでは、全長型PS1との結合は保たれていた。NCT管側ドメインと膜貫通ドメインは、PS1-N末端断片との結合に関与することが示された。全長型PS1との結合には、膜貫通ドメインが関与していることが示唆された。NCTは、PS1との重合過程において各ドメイン毎に機能的役割が異なっている可能性が考えられた。
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