前年度まで研究してきた頭頂葉における眼球位置と視覚対象に関する情報の統合過程と比較する意味で、本年度は頭頂葉に加え側頭葉のニューロン活動の解析も行った。おもに、次の2つの点に関しての研究を行った。1)海馬傍回における空間情報と物体情報の統合。海馬傍回は、嗅周囲皮質と並んで種々の情報を嗅内皮質へと伝えるゲートだと考えられている。しかし、嗅周囲皮質がおもに物体情報を担っているのとは異なり、海馬傍回は空間情報と物体情報の両方を処理していると考えられてきた。しかし、これまでのところニューロンレベルでの証拠がなかった。今回我々は、視覚刺激に対する海馬傍回のニューロン応答性を調べ、空間情報と物体情報の両方を処理していることを明らかにした。2)上側頭溝皮質における視覚情報と聴覚情報の統合。上側頭溝は多種感覚野として知られている領域であるが、ニューロンレベルで異種感覚情報の統合がおこっているのかを調べた。結果、上側頭溝には、ある視覚情報と聴覚情報を同時に受容したときだけ応答するニューロンが見つかった。
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