人やサルは、左右眼像の間に微小な水平方向の位置ずれをもったランダムドットステレオグラムを両眼融合すると、奥行きをもった面の知覚をビビッドに得ることができる。しかし、右目と左目に与えた対応するドットの輝度コントラストを反転させると(すなわち、右目で白い点は左目で黒く、右目で黒い点は左目で白くすると)、この奥行き知覚は消失する。大脳皮質一次視覚野のニューロンのほとんどは、網膜画像の受動的フィルターとしての性質を反映して、この輝度反転ステレオグラムに対して反応を示す。すなわち「知覚」を説明するにはさらなる両眼視差情報の処理か必要であることを、この心理学的知見は示している。本研究では、サルの視覚大脳皮質のV4野のニューロンが、通常ランダムドットステレオグラムに含まれる両眼視差には反応を示すもめの、輝度反転を行うとその感受性を完全もしくはほとんど失うことを示した。大脳皮質一次視覚野で起きた右目像と左目像との間のまちがった対応付けに基づく反応は、V4野もしくはそれ以前(しかし、一次視覚野以降)において、除去されることを意味している。
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