ポリグルタミン病と呼ばれる神経変性疾患群は、原因遺伝子上でトリプレット・リピートが異常に伸長することによってタンパク質内に異常ポリグルタミン領域を生じ、この異常タンパク質が神経細胞内封入体に蓄積し、最終的に変性、脱落することによって発症することが知られている。これら封入体成分は高度にユビキチン化されていることより、ユビキチン・プロテアソーム系によるタンパク質分解が、ポリグルタミン病の病態へ関与していることが示唆されている。我々はポリグルタミン病の病因解明の手がかりとしてMachado-Joseph病の原因遺伝子産物MJD1に対するE3ユビキチンリガーゼを生化学的手法で精製しているが、その過程でMJD1と結合するタンパク質VCPと、VCPに結合してMJD1のユビキチン化鎖の伸長を誘導する酵素UFD2を発見した。そこで本研究では、VCP-UFD2複合体の神経細胞における異常MJD1の分解についての検討を行うと同時に、異常MJD1を発現させたモデル動物に対してVCPとUFD2を過剰発現させ、病理学的・神経学的な変化を解析する。すでにUFD2を過剰発現することによりMJDの分解を促進できることを確認している。そして現在MJDトランスジェニックマウスおよびUFD2ノックアウトマウスおよびタランスジェニックマウスの作製をすすめているところである。個体レベルにおいてもUFD2を神経細胞内に導入することによって、異常MJD1のユビキチン化を促進し、分解を誘導できれば、神経変性疾患の発症の予防、又はその進行を遅延させる効果が期待され、遺伝子治療への応用が可能であると考えられる。
|