哺乳類Nav1.6チャネルは、細胞体での持続性電流やresurgent電流を形成すると同時に、有髄軸索における早い不活性化を示すNa電流を形成するが、同一の分子種が異なる性質のNavチャネルを形成するかは従来不明であった。これを解明するべく、まず発現系細胞(tsA201細胞およびXenopus oocyte)を用いたヒトNav1.6の強制発現実験を行った。Nav1.6チャネルは、単独で、顕著な持続性内向き電流を生じた。この性質は、同時にβ1サブユニットを強制発現させても変化しなかった。持続性電流を抑制する成分が、node of Ranvierに存在する可能性を検討するため、Nav1.6チャネルと結合することが知られているアンキリンGをNav1.6と共発現させたところ、持続性電流が著明に減少することが見出された。有髄軸索には発現が少なく、無髄軸索に発現が多い、アンキリンBを発現させても持続性電流は減少せず、更にアンキリンGとアンキリンBのキメラ分子を共発現させる実験から、アンキリンGの分子内の膜蛋白結合領域に持続性電流を減少させる責任領域が存在することが明らかになった。これらの結果はアンキリンの強制発現により細胞形態が変化するなどの間接的な効果ではなく、Nav1.6分子への直接の結合によってNavチャネル機能の制御が行われていることを示す知見である。また、アンキリンGの結合の有無、またはアンキリンサブタイプの種類が、細胞内部域特異的なNav1.6チャネルの性質の多様性に対応するという可能性が示唆された。
|