神経細胞には電気的な活動があり、神経活動にはパターンが存在する。我々は、この神経活動パターンを解析し制御することにより、脳情報処理システムの基本原理に迫り、更には治療へ応用できないかと考えてきた。上記目標を達成する上で重要な主な点は、1、脳の可塑性制御に必要な電気的情報が何であるかを解読すること、2、どこを刺激するべきか神経回路網を把握することであり、これまでこれらの柱のもと解析を行ってきた。その結果、機能的活動パターンを抽出する試みとして、分子生物学的手法を用いる方法がかなり有効ではないかと考えるに至り、現在、分子の挙動と神経活動パターンとの関係を、網羅的に解析する手法と深く掘り下げる方法の二方向から解析中である。これまでに、神経細胞に様々なパターンの電気刺激を与えて、分子の挙動を観察するための培養細胞用電気刺激装置の開発を行ってきた。その装置を用い、様々な神経活動のパターンを強制的に与えることにより分子の挙動との関係を網羅的に明らかにし、重要なパターンを抽出してきた。そのなかでも特に神経栄養因子であるニューレグリンはパターン制御において重要な役割を果たしている。 本年度は、ニューレグリン分子を用い、遺伝子発現と蛋白のプロセッシングと神経活動パターンの関係を明らかにし、発生段階を追った小脳スライスでの神経活動パターンと照らし合わせることにより、神経活動パターンのもつ意義を類推することに成功した。 また、神経回路網の解析として小脳苔状線維の小脳核から小脳皮質までの投射を網羅的に解析し、三次元的なマップの構築を行った。その結果、顆粒細胞の苔状線維からの投射の組み合わせは小脳部位により異なることが明かとなり、神経活動パターンのもつ意味合いが部位により異なることが明かとなった。
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