研究概要 |
本研究では,人間型ロボットによる行動実験と学習実験,脳計測を用いた認知神経発達科学,人間に表面的に酷似したロボットを用いた人間・ロボット相互作用実験,の三通りの手法を用いて,ロボット,人間,相互作用観測者,の三つの視点から自律性と社会性の融合システム構成法の解明を進めている.今年度は以下の成果をあげた. (1)能動相互作用実験(開,石黒,國吉):アンドロイドと人間の対話相互作用実験を行い,視線計測等に基づく定量評価に基づき,人間を相手に対話した場合との比較を行った.その結果,人間はアンドロイドに対しても無意識的に社会的関係を感じているが,人間に対する場合と全く同じではないことが分かった.また,対話時の視線評価が,このような実験における定量計測法として有用であることを示した. (2)適応相互作用モデルの構築(國吉):自律行動と模倣能力を関係付ける適応相互作用システム構成法を提案した.身体動作とそれに伴う体性感覚および視覚情報の統合学習のモデルを構築し,自律学習ロボット実験を行った.また,行動観察情報からダイナミクス分節を行うための因果抽出手法やニューラルネット学習手法を構築した. (3)相互作用アンドロイド構成法の提案(石黒):人間型の身体は,行動生成だけでなく他者相互作用にも強い影響を与える.その効果を実験するために,表面上人間と見分けが付かないほど酷似したロボットであるアンドロイドの開発を行った.また,対話状況における自然な身体動作を実現するための手法も開発した. (4)「外観」と「動き」に関する認知神経科学的実験(開):人間,ロボット,単純な機械,など異なる対象が,同じ物体操作や対話的動作などを行う例を人間の被験者に観察させ,その際の脳活動を計測した.その結果,人間とロボットの動作について,ある程度同等に見ているものの,反応の強さには差があることや,乳幼児の発達に応じて変化すること,見かけと動きがそれぞれどのような効果を持つか,などの知見が得られた. 以上の成果は,学術雑誌,国際会議等での研究発表で国際的に高い評価を得るとともに,その一部はテレビ,新聞等でも報道され,広い関心を集めた.
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