近年、地理的に分散した計算機資源をネットワークにより接続することにより、計算機資源の有効利用を図るとともに、大規模な科学技術計算を可能にする、広域グリッドコンピューティングが注目を浴びている。広域グリッドコンピューティングでは、大容量のファイルを転送するためにGridFTPと呼ばれるデータ転送プロトコルが用いられている。GridFTPは、既存のTCPの問題点を解消するため、以下のような機能を持っている。まず、TCPのスロースタートフェーズにおける転送レートの立ち上がりを速くし、さらにTCPの幅輳回避フェーズにおいて高いスループットを達成するため、複数のTCPセッションを並列に設立できる。また、ネットワークの帯域遅延積に応じて、GridFTPサーバとGridFTPクライアント間でTCPソケットのバッファサイズを動的に交渉することができる。しかし、最適な並列TCPセッション数や、TCPソケットのバッファサイズの大きさについては、これまで十分な検討が行われていない。本研究では、数学的解析手法を用いることにより、GridFTPを既存のTCP上で動作させた時の性能を定量的に評価した。また、計算機を用いて、GridFTPを既存のTCP上で実際に動作させることにより、GridFTPの性能を評価した。その結果、本報告ではTCPセッション数とTCPバッファサイズに着目し、GridFTPの最適なパラメータ設定を定量的に明らかにした。
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