線虫由来の抗菌ペプチドASABF及びABFについて、そのクローニング及びメタノール代謝酵母を宿主として用いた大量発現系の構築を行い、活性、立体構造に関する解析を進めた。その結果、モデル生物として重要性の高いC.elegansにおいて世界で初めて抗菌ペプチドの同定に成功し、NMR法による立体構造解析を進め、インセクトデフェンシンファミリーと類似性の高いものであることを明らかにした。またカブトガニ由来の抗菌ペプチドであるタキサイチンについて、大腸菌を宿主として用い、インクルージョンボディーからのリフォールディングを行うことで、大量発現系の構築に成功し、安定同位体ラベル試料を調整することで、立体構造と活性の関係について詳細な検討を進めた。その結果、タキサイチンのキチン結合能を有する抗真菌活性発現と電荷が重要である推定される抗グラム陰性、抗グラム陽性活性発現では分子内の異なる部位が重要な役割を果たすことを明らかにした。この他、メタノール代謝酵母を用いた大量発現系により生産した、カイコガ由来リゾチームについてその立体構造解析、安定性解析などをすすめ、ニワトリや哺乳類などの一般的なリゾチームには見られない低温活性などの活性を有すること、またその活性と構造の関連性に関して知見を得たほか、鱗翅目昆虫由来の異物排除に関連する血球活性化因子GBPについて変異体を用いて立体構造と活性に関する研究を展開した。
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