溶血レンサ球菌は、リウマチ熱、咽頭炎、急性糸球体腎炎、猩紅熱などを引き起こし、その劇症型の感染症は現在でも死亡率が高い。これまで一般に溶血レンサ球菌の形質転換効率は低く遺伝子操作は困難であったが、エレクトロポレーション法を応用することにより高い効率で再現性良く遺伝子を導入できる系を確立し、溶血レンサ球菌の溶血毒素として知られているストレプトリジンO(SLO)遺伝子のpromoter検索や破壊に応用した。その結果、SLO遺伝子は自身のpromoterを持っておらず、上流に位置するnusGおよびNADase遺伝子のpromoterによりポリシストロニックに転写され、オペロンを形成していることを明らかにした。また、これまで溶血毒素と考えられていたSLOは溶血にほとんど関与しておらず、NADaseのような菌体外に分泌される病原因子を宿主細胞内に移行させるデリバリーシステムとして機能していると考えられる。さらにA群およびC群溶血レンサ球菌において、SLO遺伝子の近傍をgene walkingにより調べたところ、gene orderとして共通に保存されているのはnusG-nga(NADase)-orf1-sloの領域だけであった。これらの結果は、NADaseとSLOが生合成レベルだけでなく、病原因子としても密接に関係していることを示唆する。
|