昨年度までに、転写因子インターフェロン制御因子2(IRF-2)を欠損するT細胞を移入する事によって、メモリーT細胞の蓄積の亢進を再現できることを示したが、IRF-2の作用点をさらに明らかにするべく以下の解析を行った。IRF-2欠損マウス(IRF-2-/-マウス)骨髄細胞を放射線照射B6-Ly5.1マウスに移入したところ、2ヶ月後のメモリーT細胞の蓄積の亢進が観察された。一方、RAG-1単独(RAG KO)もしくはRAG-1とIRF-2を共に欠損するマウス(dKOマウス)に野生型T細胞を移入し、1ヶ月後のメモリーT細胞の蓄積を検討したところ、dKOマウスに移入された野生型T細胞においては有意に高いメモリー型細胞が含まれていた。以上のことからIRF-2は、T細胞のみならず骨髄由来non-T細胞においても機能していることが示唆された。このnon-T細胞の候補と考えられた樹状細胞(DC)に関して、IRF-2-/-マウスでは脾CD4^+CD11c^<high>DCサブセットの著名な減少と、CD8^+CD11c^<high>DCサブセットの増大が観察された。この異常がメモリーT細胞の蓄積に寄与している可能性が示唆された。一方、T細胞中での作用に関して、BrdUの取り込みによってin vivoでのT細胞増殖を検討したところ、IRF-2欠損マウスにおけるCD8^+T細胞のBrdU取り込みは有意に上昇していたが、それは個々の細胞のBdrU取り込みの亢進ではなく、主たる増殖ステージであるCD44^<high>Ly^6C^<low>CD8^+T細胞の割合の増加によるものであった。すなわちIRF-2はT細胞の増殖そのものではなく、ナイーブT細胞の増殖ステージへのtransitionの効率をコントロールし、メモリーT細胞のホメオスタシスを制御しているものと考えられた。
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